INFOBAR歴代全機種の軌跡と真実|初代から復刻の噂まで徹底解説
2003年10月、KDDIの「au Design project」第1弾として世に放たれた携帯電話「INFOBAR」。プロダクトデザイナーの深澤直人氏が手掛けた、タイル状のキー配列と錦鯉を連想させる鮮烈なトリコロールカラーは、機能一辺倒だった当時のモバイル業界に強烈なパラダイムシフトをもたらしました。ニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久収蔵品(パーマネントコレクション)に選定されるなど、インダストリアルデザインの金字塔として世界的な評価を確立しています。
誕生から20年以上が経過した現在でも、レトロカルチャーの再評価やデジタルデトックスの文脈において、歴代モデルへの関心は衰えていません。ネット上では「今でも実機として使えるのか」「新たな後継機が復刻されるのではないか」といった議論が絶え間なく交わされています。本稿では、歴代モデルの発売順と詳細な進化プロセス、通信インフラの変化に伴う現在の実用性、そして水面下で囁かれる復刻プロジェクトの真実を徹底解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:2003年の初代から2018年の「INFOBAR xv」まで、フィーチャーフォンとスマートフォンを含めて全7機種がリリースされた。
- 要点2:auの3G停波(CDMA 1X WIN終了)により、初代からA02までの大半が通信不能であり、VoLTE対応の「INFOBAR xv」のみが通話端末として現行利用できる。
- 要点3:Apple Watch用ケースなど周年企画が熱狂を生む一方、完全新規スマートフォンの開発にはハードウェア製造と採算性の壁が存在している。
歴代モデル発売順で辿る進化の系譜|初代からINFOBAR xvまで
INFOBARの歴史は、携帯電話が単なる通信インフラから「個人の感性を表現する身の回りの道具」へと脱皮していく過程そのものでした。歴代モデル発売順を振り返ると、ストレート型ケータイから黎明期のAndroid、そして原点回帰のガラホへと、時代の波と格闘しながらアイデンティティを守り抜いた足跡が浮き彫りになります。
1. 初代INFOBAR(2003年発売・型番:A5307ST)
鳥取三洋電機(現・LIMNO)が製造を担当した伝説の原点です。折りたたみ式全盛の時代に、あえて厚さ約13.8mmのストレート(バータイプ)形状を採用。代表色「NISHIKIGOI(ニシキゴイ)」のほか、「ICHIMATSU(市松)」「BUILDING(ビルディング)」「ANNIN(杏仁)」が展開されました。突起のない格子状のタイルキーは、誤操作を防ぎつつ指先へ心地よいクリック感を伝える独特のストローク設計が施され、情報端末の概念を根底から覆しました。
2. INFOBAR2(2007年発売・型番:W55ST)
深澤直人氏が「口の中で溶けかけた飴玉」と形容した、丸みを帯びた有機的フォルムが特徴の第2世代です。ワンセグ放送受信機能やFeliCa(おサイフケータイ)など、当時の日本固有のハイエンド機能を凝縮しながら、角を極限まで削ぎ落としたラウンドスクエア形状を実現。製造難度の極めて高かった曲面ディスプレイと継ぎ目のない美しいボディは、デザインケータイの到達点として今なお熱烈な支持を集めています。
3. INFOBAR A01(2011年発売・型番:SHX11)
KDDIの新ブランド「iida」から登場したシリーズ初のAndroidスマートフォン(シャープ製)。タッチパネル全盛への移行期において、画面下に物理タイルキーを残すハイブリッドな設計を採用しました。最大の特徴は、インターフェースデザイナーの中村勇吾氏が手掛けた「iida UI」です。アプリやウィジェットが縦スクロールの美しいタイル状に並び、指に吸い付くように滑らかに動くインターフェースは、スマートフォンのUI設計史に残る傑作となりました。
4. INFOBAR C01(2012年発売・型番:SHX12)
スマートフォンでありながら、初代を彷彿とさせる細身のストレート型テンキースタイルへ回帰した異色作です。タッチ操作と物理テンキー入力を両立させ、片手操作の利便性を追求しました。画面サイズは約3.2インチとコンパクトで、スマートフォンの巨大化傾向に疑問を抱いていた層から熱狂的な歓迎を受けました。
5. INFOBAR A02(2013年発売・型番:HTX21)
台湾のHTCが製造を手掛けたフラッグシップスマートフォン。従来の物理ボタンを廃止し、アルミ削り出しのフレームと大画面液晶を統合したミニマルな外観へ進化しました。「iida UI 2.0」を搭載し、タイルがゼリーのようにプルプルと揺れ動くアニメーションや、コーネリアス(小山田圭吾氏)が手掛けた心地よい操作音など、感覚器官を刺激する総合的なプロダクト体験が構築されました。
6. INFOBAR A03(2015年発売・型番:KYV33)
京セラ製へとバトンタッチし、A02で廃止された物理キーの代わりに、静電式の「スマートセンサーキー」を画面下部に配置したモデルです。アルマイト処理が施された質感の高いマットなアルミニウムボディを採用し、「NISHIKIGOI」に加えて「MOYAMYA(モヤモヤ)」「SAKURAIRO(サクライロ)」「POOL(プール)」といった情緒的なカラーパレットを提案。サイズ感と持ちやすさのバランスが極めて優れた1台でした。
7. INFOBAR xv(2018年発売・型番:KYX31)
シリーズ誕生15周年を記念してクラウドファンディングを経て製品化された原点回帰の4G LTEケータイ(ガラホ)です。原点であるバータイプ形状を受け継ぎつつ、画面周囲のベゼルを極限まで削った「フレームレスキー」を世界で初めて採用。深澤直人氏が「初代でやりたかったが、当時の技術では不可能だったデザイン」を15年越しに具現化させました。

【データ比較】INFOBAR歴代モデルのスペックと仕様一覧
歴代7機種の基本スペック、製造元、通信方式、そして現在の実用可否を構造化データとして整理しました。
| 機種名(発売年) | 型番 / 製造元 | 主要特徴・UI | 通信方式 / 現在の可否 | 編集部の評価・位置付け |
|---|---|---|---|---|
| 初代 INFOBAR (2003年) | A5307ST 鳥取三洋電機 | タイルキー配置 ニシキゴイ初登場 | CDMA 1X 通信不可(3G停波) | MoMA永久収蔵。日本のデザイン携帯の原点 |
| INFOBAR2 (2007年) | W55ST 鳥取三洋電機 | 丸みを帯びた飴玉形状 有機EL・ワンセグ | CDMA 1X WIN 通信不可(3G停波) | フィーチャーフォン造形美の極致 |
| INFOBAR A01 (2011年) | SHX11 シャープ | 初スマホ / 物理3キー 初代iida UI搭載 | CDMA 1X WIN 通信不可(3G停波) | スマホ黎明期にUIの独自性を提示した功績 |
| INFOBAR C01 (2012年) | SHX12 シャープ | テンキー一体型バータイプ iida UI | CDMA 1X WIN 通信不可(3G停波) | 片手操作性に特化した希少な実験機 |
| INFOBAR A02 (2013年) | HTX21 HTC | アルミフレーム iida UI 2.0(小山田サウンド) | 4G LTE / CDMA 1X WIN 通話通信は実質不可 | 音と動きを完全に統合したメディアアート的端末 |
| INFOBAR A03 (2015年) | KYV33 京セラ | 静電式スマートセンサーキー アルマイトボディ | au VoLTE対応 4G LTE 通信可(OS制限多数) | 質感と道具性の融合。スマホ最終モデル |
| INFOBAR xv (2018年) | KYX31 京セラ | フレームレスキー 4Gガラホ仕様 | au VoLTE対応 4G LTE 音声通話・SMS等で現役動作 | 15年目の原点回帰。実用可能な唯一の選択肢 |
INFOBAR現在使えるか?|3G停波後のリアルと実用性の限界
中古市場やフリマアプリでINFOBARを見かけ、「デザインに惚れて今から使ってみたい」と考えるユーザーが直面する最大の壁が通信インフラとソフトウェアの世代交代です。結論から言うと、日常使いの携帯電話として契約・運用できるモデルは極めて限定されています。
KDDIは2022年3月31日をもって3G携帯電話向けサービス「CDMA 1X WIN」を完全に終了しました。この電波停止措置により、3G専用端末である「初代INFOBAR」「INFOBAR2」「INFOBAR A01」「INFOBAR C01」は、SIMカードを挿入しても電波を拾うことができず、電話の発着信やパケット通信は一切行えません。電源を入れて時計やアラーム、保存された静止画の閲覧など、オフラインの展示用ガジェットとしてのみ動作する状態です。
スマートフォンモデルである「INFOBAR A02」は初期の4G LTEに対応していたものの、音声通話が3G回線依存であったため、3G停波に伴い通話機能を喪失しました。続く「INFOBAR A03」はau VoLTEに対応しているため技術的な通話接続は可能ですが、初期搭載OSがAndroid 4.4で止まっています。ウェブブラウザのセキュリティ証明書更新に対応できず、主要な決済アプリやSNSアプリもインストールできないため、実質的にスマートフォンとしての実用寿命を迎えています。
日常の通信手段として実動するのは、2018年に登場した「INFOBAR xv」のみです。auの4G LTEおよびVoLTEに対応しており、クリアな通話やSMS送信が可能です。ただし、ガラホ向け「LINE」アプリのサービス提供が終了している点や、テザリング機能を用いたWi-Fiルーター代わりの運用、あるいは純粋な通話専用サブ端末としての活用に用途が絞られる点には留意する必要があります。

一般に知られていない盲点とネットの誤解
インターネット上の掲示板やSNSでは、INFOBARに関して事実とは異なる言説や誤解がしばしば散見されます。中古購入やコレクションを検討する前に把握しておくべき重要な事実を検証します。
1つ目の誤解は、「Wi-Fi環境があれば、歴代のAndroidモデル(A01やC01)もサブ機として十分遊べるのではないか」という期待です。しかし、これらの初期端末はAndroid 2.3をベースにしており、Google Play開発者サービスが完全にサポートを打ち切っています。Googleアカウントへのログイン自体が弾かれるケースが多く、現代の暗号化通信(TLS 1.2以降)に対応していないため、Wi-Fiに接続しても大半のWebサイトが開けません。
2つ目の盲点は、バッテリーの経年劣化と調達難度です。初代やINFOBAR2、A01などのバッテリーパックはとうの昔にメーカー生産が終了しており、デッドストックや中古品であっても内部のリチウムイオン電池が膨張している個体が少なくありません。分解交換にも高度なリスクが伴うため、「動作品」として購入しても数十分で電源が落ちてしまうトラブルが報告されています。
3つ目は「INFOBARの全機種が防水仕様である」という誤認です。実際には、初代からA02までの歴代モデルは非防水です。防水・防塵仕様(IPX5/IPX8)が実装されたのは2015年の「INFOBAR A03」以降であり、ヴィンテージ機を扱う際は湿気や水没に対して現代のスマートフォン以上の厳重な配慮が求められます。
【実態検証】利用者の生の声と現場目線で見えたリアル
SNSやオンラインコミュニティにおけるINFOBAR愛好家たちの声、そして展示会などに足を運ぶ熱心なファンの反応を検証すると、単なるガジェットへの執着を超えた感情が見て取れます。
初代やINFOBAR2のオーナーたちからは、「机の上に置いてあるだけで空間が洗練される」「手に持ったときのタイルの凹凸や飴玉のような滑らかさは、ガラス板ばかりの現代のスマホでは絶対に味わえない」といった、物質としての触感に対する強い愛着が語られます。通信機器としての機能が完全に停止した後も、ペーパーウェイトやオブジェとしてデスクサイドに飾り続けているユーザーが珍しくありません。
一方、INFOBAR xvを現在も愛用している層からは、次のような実利的な証言が寄せられています。
「スマホを見続ける生活に疲れてxvを通話専用に持った。通知に追われない生活が手に入り、ポケットから取り出すたびにデザインの美しさに気分が上がる。ただし、出先での地図検索やキャッシュレス決済はできないため、財布とタブレットの併用が必須になる」
熱心な支持がある一方で、フリマアプリでの中古取引におけるトラブルの声も目立ちます。「通話可能と書かれていたが3G機だった」「外装のプラスチックが加水分解でベタついていた」といったクレームは後を絶たず、ヴィンテージ品としての見極めが強く求められる実態が浮き彫りになっています。

INFOBAR後継機最新情報とデザインケータイ復刻の真相
ファンが最も固唾をのんで見守っているのが「INFOBARの完全新作や後継機は出るのか」という点です。2023年に東京・多摩センターのKDDI MUSEUMで開催された「INFOBAR大百科展」では連日多くのファンが詰めかけ、デザインケータイ復刻への渇望が改めて証明されました。
その熱量は具現化し、2024年にはau Design projectの派生企画として、CAMPFIRE等のクラウドファンディングを活用した「初代INFOBAR型Apple Watch Case」が登場しました。Apple Watchを初代INFOBARのボディに収めて懐中時計のように持ち歩くこのプロダクトは、目標金額をわずか数時間で達成し、最終的に数千万円規模の支援を集めるなど爆発的な反響を呼びました。
しかし、取材や業界筋の動向を総合すると、「単体通信を行う完全新作のスマートフォン」としてのINFOBAR復活には極めて高いハードルが存在します。現代のスマートフォン市場は部品の共通化と大型ディスプレイが前提となっており、深澤直人氏が追求するような「独自のサイズ感」「特殊なタイル状の物理キー」「個性的な金型」をイチから成型する場合、製造コストは跳ね上がります。大手キャリアの端末調達方針がグローバル展開される画一的なモデル(iPhoneやGalaxy等)に集約される中、国内専用の独自金型端末を数万台規模で採算に乗せることは極めて困難なのが実情です。
そのため、今後の展開としては「スマートフォンの形をした新作」よりも、Apple Watch連携ケースのようなスマートデバイス周辺機器としての復刻や、クラウドファンディングによる特定ニッチ層向けのミニマムな通信端末としての限定的復活が最も現実的なシナリオとみられています。
デザイン社会学から見るINFOBARの本質とユーザーの判断基準
なぜINFOBARは、これほどまでに人々の記憶に刻まれ続けるのでしょうか。道具に対する人間の心理と社会構造の観点から分析すると、そこには「機能合理主義へのアンチテーゼ」が存在します。
2000年代以降のIT産業は、薄さ、軽さ、画面の広さ、処理速度といった「定量的スペック」の向上のみを正義として突っ走ってきました。しかし、その結果生み出されたのは、どのメーカーの製品か判別できない黒く平らなガラス板の氾濫でした。人間には、合理性だけでなく「手触り」「色使いの妙」「道具を所有する高揚感」といった情緒的アタッチメント(愛着)を求める本能が備わっています。深澤直人氏が生み出したINFOBARは、機能競争の荒野の中で「道具が人に寄り添う温かみ」を形にしたからこそ、文化財としての強度を獲得したのです。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
過去の名作であるINFOBARに今惹かれている読者は、自身の目的と照らし合わせて以下の基準で判断することをお勧めします。
- 手に入れるべき人:
- デザイン史に残る工業製品をコレクションし、インテリアやオブジェとして愛でたい人
- INFOBAR xvを活用し、SNSや通知から距離を置く「デジタルデトックス」を実践したい人
- 音声通話と最小限の連絡手段のみを切り出し、2台持ちのサブ機として運用できる人
- 購入を避ける・慎重になるべき人:
- メインのスマートフォンとして1台で日常の決済、地図、SNSを完結させたい人
- フリマアプリ等で古いモデル(初代〜A03)を購入し、格安SIMを挿せば動くと誤解している人
- 経年劣化したリチウムイオンバッテリーの取り扱いや保守に不安がある人
【infobar 歴代】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:初代INFOBARのカラーバリエーションで最も象徴的なカラーは何ですか?
A1:白、赤、ベージュのタイルキーを組み合わせた「NISHIKIGOI(ニシキゴイ)」です。日本の伝統美と現代的なポップカルチャーを融合させた配色として世界中で絶賛され、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のパーマネントコレクションに選定された際もこのカラーが収蔵されました。
Q2:INFOBAR xvを今から中古で購入してLINEを使うことはできますか?
A2:現在、INFOBAR xvを含むフィーチャーフォン(ガラホ)向けLINEアプリはサービス提供およびサポートが終了しています。ブラウザ経由での利用も実質不可能なため、LINEを使用することはできません。通話、キャリアメール、SMS専用端末としての利用に限られます。
Q3:初代やINFOBAR2を最新の5Gスマートフォンとして復刻してほしいという署名活動などはありますか?
A3:公式の署名運動ではありませんが、ファンコミュニティやSNS上では定期的に完全復刻を望む声が上がっています。KDDI側も「au Design project」の枠組みで20周年記念イベントを開催したり、Apple Watch用ケースを商品化するなどファンの声を認識していますが、フルスクラッチの5Gスマホとしての再商品化は開発・金型コストの観点から非常にハードルが高いとされています。
Q4:スマートフォンの「iida UI」は他のAndroid端末にインストールして再現できますか?
A4:かつて有志による非公式のランチャーアプリや再現テーマが配布された時期もありましたが、公式の「iida UI」は当時の端末ハードウェアおよび専用OSビルドに深く統合されていたため、現代のAndroidスマートフォンで完全な挙動やアニメーションを忠実に再現することはできません。
まとめ:時代を超越する名機が遺したメッセージと今後の展望
INFOBARの歩みは、日本の通信機器が世界で最も独創的で、作り手の情熱が純粋にプロダクトへ注ぎ込まれていた幸福な時代を象徴しています。初代から始まった挑戦は、スマートフォンの画一化に抗い、15周年の「xv」に至るまで、道具と人との幸福な関係性を問い続けました。
現在、通信端末としてのINFOBARの多くは実働の役目を終えつつあります。しかし、Apple Watchケースへの転生に見られるように、優れたインダストリアルデザインは形を変えて生き続けます。スペックの数字ばかりが強調される現代だからこそ、手のひらに収まる「ニシキゴイ」のタイルが放った強烈な美意識は、これからも色あせることなく語り継がれていくはずです。 (出典: infobar 歴代(Yahoo!ニュース))